男性不妊症

子供が欲しいご夫婦が、通常の夫婦生活を行っても1年間以上妊娠しない場合、不妊症と考えられます。不妊症の原因は、男性40%、女性40%、不明20%とされ、男性側の精査・治療が必要となる場合も少なくありません。

当院は、男性不妊症に対する専門的診療を行う数少ない泌尿器科クリニックであり、男性不妊症の患者数は、大学病院・総合病院を含めても、中国四国地方では最多です(新患数 約600名:2015年度)。不妊クリニック(産婦人科)と密に連携を取りながら、少しでも精子を増やし、妊娠の可能性を高めることを目指した治療を行っています。
子供がなかなかできないということでお悩みの方は是非ご相談下さい。

なお、奥様側の情報があった方が、診療が効率的かつ円滑にすすみます。現在、産婦人科でどのような検査・治療を行っているのか、よく聞いておいてください。

男性不妊症の検査

では、「性不妊症」は、どのような検査を行うのでしょうか?

男性不妊症の検査の基本は詳細な問診と精液検査です。この他、超音波カラードプラ検査とホルモン検査(血液検査)も行います。
また、症状によっては、染色体検査(血液検査)なども行います。当院では、痛みを伴う検査は行いません。

WHOの診断基準 2010年版
精液量 1.5ml以上
精子数
(1mlあたり)
1500万以上
運動率
(%)
40%以上
正常形態率
(%)
40%以上

精子数7000万・運動率60%

非常に良好で、精子の数も多く、素早く前進しています。

精子数3000万・運動率40%

精子の数や運動率ともにやや不良です。自然妊娠の可能性はやや低くなります。

精子数400万・運動率25%

精子の数も少なく動きも弱いことから、体外受精や顕微授精などを考慮しなくてはなりません。

精液検査

精液検査は受診後説明を受けてからとしており、初診時の精液の持ち込みはお断りします。

精液検査は、1回3000円(自費診療)です。

精液検査は禁欲期間2〜5日、射精後1時間以内の検査、精液全量採取を原則としています。

当院は精液自動測定器がありますので、検査結果は当日にお話できます。診療終了の15分前までに、精液を持参していただく必要があります。

精液検査は変動が大きいため、繰り返し行うことが必須です。以前に他の医療機関で精液検査を行った結果をお持ちの場合は、是非ご持参ください。

WHO(世界保健機構)が定めた精液検査の正常値(自然妊娠が可能な精液の下限)は右図の通りです。当院では、この基準に基づき精液検査を行っています。

ホルモン検査(血液検査)

ホルモン検査では、精子をつくるために必要なホルモンのバランスが崩れていないかを調べ、その値に応じて、ホルモンの補充などを検討します。

超音波カラードプラ検査

超音波カラードプラ検査では精巣(こう丸)・精巣上体(副こう丸)を中心に、精液の通り道(精路)を詳しく観察し、精索静脈瘤や他疾患(腫瘍など)の有無を判定します。

染色体検査(血液検査)

極端に精子の数が少ない場合や精子がいない場合は、染色体検査(血液検査)をおすすめしています。

遺伝子検査(血液検査)

精子がない患者さんのなかで、AZFとよばれる精子をつくる遺伝子がないことがあります。この場合、どのような治療を行っても精巣から精子を回収することはできません。このため、精子をさがす手術の前に行うことがあります(自費診療:38000円)。
ただし、この検査は平日の午前中のみで予約制です。

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男性不妊症の治療

何が原因で、どのような治療を行うのでしょうか?

男性不妊症の要因には、精子の数が少ない・動きが悪い(精索静脈瘤が認められた場合/原因不明の場合)、精子がいない(無精子症)、などがあります。それぞれの症状により治療内容は異なります。

精子の数が少ない・動きが悪い

精索静脈瘤が認められた場合と原因不明の場合があります。

精索静脈瘤 が認められた場合

精索静脈瘤が認められた場合、手術による改善の可能性について検討します。

原因不明の場合

当院では、ホルモン剤による治療を積極的に行っています。現在のところ30~35%の有効率(当院では運動精子が2倍以上に増えた場合を有効としています。)です。
漢方薬・血流改善剤・ビタミン剤などは有効率・改善率(有効な場合にどれくらい精子がふえるか)が低いため、単独の治療としてはおすすめしていません。
ホルモン剤の一部は自費診療となる場合があります。

※:精索静脈瘤
精索静脈瘤は、原因不明に精索静脈(精巣から心臓に向かって流れる血管)が瘤状に膨れる病気です。軽いものも含めれば、全男性の5%以上に認められますが、男性不妊症の方では特に多く認められます。
ほとんどは左側に生じます。大きいものであれば、精巣の上方に血管のかたまりを触れるようになり、立ち上がった状態で、おなかに力を入れるとより大きくなります。
精索静脈瘤によって、精巣の温度が高くなるため、精子の数、運動率に悪影響を及ぼし、結果として男性不妊となる可能性が考えられています。特に大きな精索静脈瘤では、左の陰嚢の痛みや不快感、肛門周辺および太もも内側の違和感をきたす場合があります。
精索静脈瘤の治療は手術です。ただし、不妊への影響が小さいと考えられる場合には、他の治療を優先することもあります。
手術後に全例で精液所見が改善するわけではありません。運動精子数が2倍以上になるのは約50%(当院データ)でした。また、体外受精や顕微授精の着床率向上(当院データ)や、他の不妊治療成績を改善するという報告もあります。さらに、精索静脈瘤を放置すると、時間の経過とともに精液所見がより悪化する可能性があります。このため当院では、積極的に手術をおすすめし、手術可能な施設へ紹介しています。
手術には、様々な方法がありますが、手術方法は、治療成績には関係ないとされています。なお、通常入院が必要となります。

精子がいないとき(無精子症)

不妊症に関連する自費診療
精巣精子回収術(TESE) 115,000
顕微鏡下精巣精子回収術(Micro-TESE) 255,000
当院で2回目以降のMicro-TESE 145,000

精子がなければ、不妊治療を行うことはできません。

精液中に精子が見つからなくても、精巣内には精子がごく少量存在することがあります。精巣から精子を回収できれば、その精子を用いて、顕微授精を行い、妊娠に至る可能性があります。

当院では、精巣からの精子回収を年間40例以上行っています。通常の精巣精子回収法(TESE)に加え、顕微鏡で精巣の中を観察しながら精子回収を行う顕微鏡下精巣精子回収術(Micro-TESE、MD-TESE)も行っています。精巣が小さい、ホルモン値の異常が大きい、染色体異常および抗がん剤使用後などの場合は、Micro-TESEをお勧めしています。いずれの手術も、局所麻酔(精索神経ブロック)、日帰り手術として行っています。

なお、精子回収手術は、全額自費診療(右表)になります。

射精できないとき(逆行性射精)

糖尿病や骨盤内手術後の患者さんで、射精しても精液が出てこない場合があります。この場合、 射精された精液が膀胱内へ逆流している場合があり、逆行性射精と呼ばれます。この場合、内服 治療や、膀胱内の精子の回収などを行います。

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